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うつ状態とうつ病、その意味

1.うつの意味



 精神分析的には、うつ病にぜい弱な自己愛や低い自尊心を想定する。罪悪感や自己卑下と関連する怒りや攻撃性、現実には存在し得ないような完璧な養育者像を求めるのも特徴的である。要求がましく完璧主義的な超自我が中心的な役割を演じ、同時にその要求によって苦しめられているように見える。

 フロイトは、うつ病について「対象の陰が自我の上に落ちる。」といい、うつ病の人が見せる自己非難、自己叱責は、実はその人にとって失われた対象を非難、叱責していると続ける。そういう意味で、うつ病は愛する対象の喪失に伴う情緒を抱えきれず、失った他者と自己を自己愛的に同一化し、一体化することによって喪失した現実とそれに伴う空虚感や悲しさに触れることから必死に逃れようとしているといえよう。

 怒りの感情を喪失した他者に向けられず、逆に失った他者と同一化し、自罰的になることで自分の生きる道を見出そうとする。喪失した他者から離れられず、共に生きようとしているのかもしれない。

2.うつ状態

 うつ状態とは、抑うつ状態と同義で、疾病論的な用語ではなく、状態像を示す用語である。一般的に、精神運動活動が抑えられている状態を指すと考えられている。躁状態と並んで感情の異常の代表的なものだが、実際の鬱状態は感情面だけでなく他の領域の症状にも関係する。

(1)感情面

 抑うつ気分、悲哀感、不安感など。

(2)精神運動面

 思考・行動の抑制、焦燥を伴う興奮など。

(3)身体面

 各所のあるいは全身の不調。

 この各領域の症状が様々な組み合わせと強度で現れるため、実際の状態像も様々である。うつ状態は内因性うつ病に現れるが、心因性にも身体病の随伴症状としても現れる。

3.うつ病

 うつ病の本質は、気分が沈む、抑うつになるといったものではなく、生きる意欲そのものが枯渇し、だがそれではイケないと焦づたり絶望したりしつつも、無か感からどうにも抜け出せない状態(春日、2018) であるという。

 うつ病は、メランコリーの名で知られる状態であり、症状としては上述したうつ状態とほぼ同じである。三大症状といわれる、悲哀、生気性抑うつ、制止も普遍的な症状ではない。よく挙げられる分類は、下記の3つである。

(1)身体因性うつ病

 身体疾患との因果関係がはっきりしており器質的家庭の直接の結果として起こるうつ病。この過程は、脳の損傷のように一時的脳障害( = 器質性うつ病) でも、脳以外の身体疾患が二次的に脳を侵しても( = 症候性うつ病) よいとされる。

(2)内因性うつ病

 うつ病の古典型。うつ病の代表として症候群や経過に一定の特徴がある。ほとんどすべての症例で病相期が終わると発病前の人格水準に戻り、今では①周期性うつ病(=うつ病相のみの単相性経過)②循環性うつ病(=躁うつの両相性経過)に分けることが多い。③特殊型として、統合失調症の内因性うつ状態がある。早朝覚醒と日内変動、全体感情妄想(貧困、心気、罪業など)、原発生罪業感、生気的悲哀、抑うつ的気分失調などが病相としてみられる。

(3)心因性うつ病

 抑うつ状態が心的な契機から生じたことが了解できるもの。①反応性うつ病、②神経症性うつ病、③異常な抑うつ的発展(消耗性うつ病、根こそぎうつ病など)などに分けられる。

 なお、うつ病という場合、抑うつ症候群を意味することが多い(春日、2018)。精神的、精神運動的、身体的症状が様々な組み合わせと強度で集まったもので、状態像も様々である。原則として完全寛解し、経過の長短は予後や疾病学的診断と関係がない。