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依存性パーソナリティ障害

1.依存性パーソナリティ障害とは



 世話をされたいという過剰な欲求のため、従属的な振る舞いでしがみつき、分離に対する強い不安を抱いているパーソナリティ障害である。過剰な助言や補償がなければなかなか自分で決められない。終始、他人の指示に従おうとする。自分の考えがあったとしても、依存する相手の欲求に自分を合わせようとする。一人は不安で、無力で落ち着かない。

 依存性パーソナリティ障害の家族は、往々にして自立性が低く、支配性が高い。自立は危険に満ち溢れていると伝えられ、根底にある不安によって世話すること、世話されることを求めざるを得なくなる。依存は怒りを周到に隠すことにつながり、敵意や攻撃性を防衛するという意味では妥協形成といえるが、しばしば悪意ある要求に姿を変えて表出することになる。

 一見すると弱々しいだけのように見せるが、病的なまでに他者にしがみついたり、他人の言動に便乗して一切の責任を回避したりすることで、安全な場所に身を潜めようとする。周囲を見下し、支配しているかのような振る舞いには、潜ませた万能感を伺わせる。受動的な構えや弱々しさの演出は、病理構造体を覆う隠れ蓑として機能しているといえよう。

 歴史的にはアブラハムの口唇性性格やホーナイの従属性格がその起源とされる。依存対象からの分離をきっかけに顕在化することが多い。