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うつ病@気分障害

1.うつ病



 古代からメランコリーという名で知られている状態であり、うつ病の語源(depression)は、ラテン語のdepremere(抑える、低下される)である。もともとは、精神機能の減少や障害を表す概念として用いられた。E.クレペリンは、このうつ病を悲哀不安的な気分失調と思考行動の困難を伴う状態である定義したが、現在、うつ病の概念は多様で、一言で表す典型的な症状はない。

2.抑うつ状態

 抑うつ状態は、病因や経過を重視する。よく挙げられる分類は、身体因性うつ病、内因性うつ病、心因性うつ病の3つである。なお、原則として経過の長短は予後や診断と関係ない。

(1)身体因性うつ病

 身体因性うつ病とは、身体疾患との因果関係がはっきりしているうつ病のことである。脳動脈硬化症や進行性麻痺など脳の損傷による場合を、器質性うつ病といい、感染や中毒性など脳以外の身体疾患による場合を、症候性うつ病という。

(2)内因性うつ病

 内因性うつ病は、うつ病の古典型である。古代からのメランコリーであり、うつ病を発症したとしてもほとんどの場合は発病前に人格水準に戻る。うつ病のみのエピソードをたどる周期性うつ病と、躁うつの両相性の経過をたどる循環性うつ病に分けられる。特殊型として、統合失調症に現れる内因性うつ状態がある。症状は、日内変動、全体感情妄想(貧困、心気、罪業)、原発性罪業感、生気的悲哀、抑うつ的気分失調など。抗うつ剤が有効である。

(3)心因性うつ病

 心因性うつ病は、うつ状態が心理的なきっかけに生じたことを了解できるものである。反応性うつ病、神経症性うつ病、異常なうつ病(消耗性うつ病、根こそぎうつ病など)に分けることもある。

3.その他:うつ病の正体

 春日(2018)は、うつ病について、気分が沈む、抑うつになる、といった症状がうつ病の正体というわけではないと指摘し、

 生きる意欲そのものが枯渇し、だがそれではいけないと焦ったり、絶望しつつも無力感からどうにも抜け出せない状態と考えるべきだろう。そして、眠ろうとしても眠れない、取り越し苦労ばかりが頭の中を駆け巡る。もはや自分の身体は、重く厄介な肉の塊でしかない。

と続ける。