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オクノフィリアとフィロバティズム

1.オクノフィリアとフィロバティズム



 バリントが、前エディプス期の対象関係の障害に対するポジションの2つをオクノフィリアとフィロバティズムという言葉で定義つけた。

(1)オクノフィリア

 オクノフィリアとは、成長の過程で見出される重要な対象にしがみつき、これを独占し、一体化しようとする傾向のことである。その相手なしには生きていられないと感じ、強烈な分離不安が生じる。それゆえ、死にものぐるいでしがみつくとともに、対象を理想化することになる。例えば、母親に固着すると、いつまでも甘えと反抗と不満に執着し続けることになる。

 しがみつきの背景には、何らかの不安や不満が存在するが、そのしがみつきが新たな葛藤を生じさせるという悪循環に陥っている。

(2)フィロバディズム

 フィロパディズムとは、対象関係の一切を信用できない欺瞞的なもの、冷酷なものと考え、関わりそのものを回避し、自然などに没入することである。森と山に自己形成を見出した空海、近親相姦願望を禁忌とし、石ころや草木の中に関わりを見出しそれを「恋した」宮沢賢治などを例に上げられる。福島(1980)は、「他者」を無視した自然への没入こそ原初的エロスの再現に最も近いと述べている。

 フィロバディズムは、分裂病圏のように奇妙でひねくれた不自然なものではなく、よく見れば自然で、微笑ましい種類のものであるという。俗世から超越した人間感は、現実を冷めた目であるがまま見ることを可能にするのかもしれない。