臨床心理学にいる

臨床心理学や犯罪心理学についてだらだらと書き綴るサイト。

精神病

1.精神病とは



 精神病とは、精神障害のうち、より重症の精神症状や行動障害を呈する一群の総称である。より軽症の精神障害とされる神経症の対照として用いられることが多い。とはいえ、神経症と同様に精神病も曖昧な概念であるため、限定的に使われている。

2.様々な精神病

(1)単一精神病

 クレペリンによって早発|生痴呆(統合失調症)、躁うつ病がそれぞれ独立した疾患であると主張されるまで、19 世紀を通じて疾病論のーつを担っていた精神病である。当時、多様な精神障害の病像は全体としてただーつの精神病の異なる現象形態であって、複数の疾病が存在するわけではないとされた。なお、ツェラーらは、4つの基本形ないし4つの段階(うつ状態、躁状態、妄想症、痴ほう)を区別している。

(2)中毒性精神病

 物質乱用などの化学物質の摂取によって生じる精神病のこと。原因物質は産業化合物( シンナーや一酸化炭素など)、嗜好品(アルコールや二コチンなど)、医薬品(覚醒剤や睡眠薬など)と多種であるが、依存を生じさせる物質が問題となる。外因性精神病、器質精神病、身体に基礎づける精神病に属し、原因は体外からの毒素で、尿毒症、糖尿病などの体内から発生する場合は症状精神病という。

 原因物質と精神症状との関係は複雑で、化学的性質と摂取量に加え、イ固人の身体的・心理的条件、接種状況などの多様な因子が病像に影響する。経過は急性と慢性に大別されることが多い。

(3)内因性精神病

 内因によって発生すると考えられる精神病のこと。統合失調症と躁うつ病を二つの柱ととらえて二大内因性精神病と呼ぶ。ここに非定型内因性精神病や真性てんかんに伴う精神病状態を加えることもある。いずれにせよ、外的要因はないにもかかわらず、発生する精神病である。

(4)反応精神病

 何らかの身痛切な体験によって心因性に発生する精神病状態のことをうぃう。心因反応と同義である。

(5)非定型精神病

 内因性精神病はクレペリンによって統合失調症と躁うつ病という二大疾患群に分類されたが、この2つの間には明確な区別はなく、いずれにも分類できないケースが少なからず認められることから、①統合失調症と躁うつ病の混合状態(混合精神病)と、②独立した数種類の症候群とする見方が生まれた。変質精神病、辺縁精神病などともいわれる。

(6)旅行精神病

 ニールソンが海外旅行で起こる精神症候を旅行精神病と名づけた。注察妄想、被毒妄想、殺害妄想、性的被害妄想、幻覚、意識障害などが見られる。統合失調症によく似た病像を呈するものの、シュナイダーの一級症状は見られない。原因は、非社交的・依存性の強い性格の人が、旅行中に孤立感、疲労感が高まり、強い情動的僅少が生じたためと考えられる。それゆえ、治療は保護した上で安静、睡眠をとらせることとなる。もちろん、予後は良好。