1.気分障害の成り立ち
気分障害とは、従来の抑うつ神経症や躁うつ病、情動性人格異常など、抑うつや気分の高揚などの気分変化を主とするカテゴリーの総称として、1987年にDSM-Ⅲ-Rで用いられた疾病分類である。後にICD-10においても採用されることになった。これまでは感情障害といわれてきたが、全般的かつ持続的な情動の変化を指すには「気分」という語がよりふさわしいとして、気分障害という名称が採用されている。下位分類に単極性障害や双極性障害が含まれる。現在の気分障害は、従来の内因性うつ病の概念を放棄したものだが、E,クレペリンの述べたものに極めて近い。
気分障害は、統合失調症と同様に生物学的要因の強い障害である。発病には遺伝的要因が強く関与しているとされる。
うつ病は、病的状態から健康なものまで連続性を持っている。ストレスが掛かっているときには、もともと健康な人でさえ軽度のうつは起こる。フロイトは、うつ病に共通することとして、極端な自己価値の引き下げと内部に向けた怒りの結果であると述べた。
2.気分障害の種類
(1)単極性障害:うつのみ
A.大うつ病:重いうつ
抑うつ気分が何か月も続き、日常生活に支障が出る。それを見続けた家族は困惑して無力感を募らせ、やがていら立つ。主な特徴は、抑うつ気分、興味関心の減退、無価値感、過剰な罪悪感、食欲減退・食欲増進、睡眠障害・過眠、落ち着かない、疲労感、集中力の低下、決断困難、希死念慮・自殺念慮など。
B.気分変調症:軽いが慢性的なうつ
ずーっと暗く、不安で、心配性で、いら立ちやすい。症状があまり激しくないため、見過ごされがち。主な特徴は、食欲減退・過食、不眠・過眠、気力低下、披露、自尊心の低下(無価値感、不適応感、劣等感)、集中力の低下、決断困難、絶望感など。
(2)双極性障害:うつと躁
躁状態と抑うつ状態を別々に経験するだけでなく、両方混ざったりもする。気分が抑うつでありながら、思考が頭を駆け巡って止まらない状態など。血縁者に躁うつ病患者がいる場合、発症率は平均よりも10倍に高まる。
A.双極Ⅰ型障害(躁うつ病):うつも躁も重い
気分や気力、睡眠時間が大きく揺れ動く。約60%はアルコール乱用や薬物乱用に走る。主な症状は、気分の高揚と開放感といら立ち、自尊心の肥大(異常に自己肯定的)、睡眠欲求の減退、じょう舌、観念奔逸(思考が止まらない)、注意散漫、性欲の亢進、仕事量の増加、危険を冒すなど。
B.双極Ⅱ型障害:躁が比較的軽い
双極性障害の約60%がこのタイプで、大うつ病エピソードと軽躁病エピソードを経験する。うつ病エピソードのときにしか受診しないため、単極性と誤診されることも多い。
C.気分循環症:うつも躁も軽いが慢性的
うつと軽躁のエピソードが交互に現れるか、混ざって現れる。気分屋や気難しい人と見られ、パーソナリティ障害と誤診されることもある。主な特徴は、睡眠過多・減少、引きこもり・社交的、寡黙・多弁、理由のない涙・笑い、思考の鈍化・思考明晰、自身の低下・自信過剰、心配・楽天的など。
3.原因
うつ病患者には、うつ病と結びつく遺伝的・生化学的機能障害がもともとあり、その障害が、家庭環境の中の何らかの出来事をきっかけに表面化すると考えられている。