1.感情とは

感情は、心的機能の基本をなすもので、快・不快を中心に直接体験される能動的・受動的な自我状態のことをいう。何かに反応して急激に生じる一過性の強い感情を情動といい、逆に持続的で軽度な感情状態を気分という。
- 感情:能動的あるいは受動的な「快」から「不快」の自我の状態
- 情動:一過性の強い感情
- 気分:持続的で軽い感情
2.様々な感情
(1)感情異常
感情異常は、量(強弱)、質、持続に分けられる。量の異常は、躁病における感情高揚(躁病の中核症状・生気的感情の亢進した状態)や気分高揚として現れ、持続期間は長い。一方で、量の低下は、うつ病における感情沈滞(うつ病の中核症状・生気的感情の低下した状態)や気分沈滞として現れ、持続期間は長い。
質の変化は、うつ病における生気的悲哀がある。この他に上機嫌、病的興奮、離人症における感情疎隔感、感情が思考内容にそぐわない感情倒錯、感情鈍麻(統合失調症や器質精神病などで見られ、感情の細やかな動きが減少して人間的な交流が失われ、やがて「植物人間」と至る)、不閑性とそれが高度になった感情荒廃、無感情、情動秘安定、情動失禁、情動麻痺、気分変調、不快気分、気分妄想、アレキシサイミアなどが量的・質的異常として認められる。
(2)感情移入
相手の中に自分の感情を差し入れること。一定の気分的な性格が付与されるのが特徴で、共感ともいう。
病的な現象は次の通り。
- 感情移入の不能:他人は死人のように見える。
- 感情移入の亢進:他人の感情がひしひしと迫ってくる。
- 感情移入の錯誤:全く存在しない心的なものが了解される。