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意識

1.意識とは



 意識とは、自分の状態と周囲の状態を知っていること、それに気づいていることである。英語、フランス語ともにラテン語のcum(ともに)とscius (scireの過去分詞、知った)から合成されたconscius を語源とする。ラテン語自体にも、ともに知るという意味の他に己を知るという意味もある。意識は、最も基本的で、直接的な体験のことである。

2.意識障害

 意識障害とは、知覚、注意、認知、思考、判断、記憶などの全ての精神活動の一過性ないし持続的な障害のことである。論理的思考などの高次精神活動の障害だけでなく、自分は誰で、ここはどこかといった知覚・注意・認知などの低次の精神機能の障害も含む。基本的には、下記の3つに分けられる。

(1)意識狭縮

 意識の広がりの障害で、意識の範囲が狭くなった状態である。典型的には心因性に見られる。強い情緒体験があると、意識はその対象のみに関心を向けたり、あるいは逆に対象を避けるように狭めたりする。周りが見えず、一部の対象しか意識されなくなる状態である。

(2)意識混濁

 意識混濁は、意識の清明性(覚醒度)が低下する障害である。意識清明と意識喪失(昏睡)の中間に出現するあらゆる段階の意識障害を含む。ぼう然として見える程度から、全く応答せず、強い痛みにも反応しない状態まである。基本的には、ぼーつとしている。意識清明>意識混濁>意識喪失の順となる。

A.昏蒙(こんもう)

 昏蒙とは、軽度の意識混濁のことである。認知機能が障害されるため、外界と自己の区分けや現実見当識が保てず、注意の集中と持続が侵される。意欲や感情の動きが乏しくなり、自発的な言動は見られなくなる。

B.昏眠

 昏眠とは、中度の意識混濁で昏睡に入る前段階または、昏睡からの回復途中に見られる。目を閉じ横向きに寝たままで、自発的な動きはほとんどない。見当識は失われ、後に健忘を残す。

C.昏睡

 昏睡とは、重度の意識混濁のことである。

(3)意識変容

 意識変容とは、意識される内容が質的に変化し、また時間的にも変転する状態である。意識混濁(ぼーつとしている状態)を背景に、不安や緊張、夢幻状態や幻覚、運動不安などの症状を示し、意識野も狭縮する。脳の病的な興奮や、脳や心理構造の上位機能が失われたことによって下位機能が解放された現象と理解される。ネジが外れて、中がバラけたようなもの。溢れ出す。なお、精神医学的には次の4段階に区別される。

A.無分別

 集中して考えることを喪失した状態のこと。

B.昏迷

 強い制止作用により眠気が強く、弱い刺激を加えれば目覚めるが、放っておけば眠ってしまう。

C.嗜眠(しみん)

 強い刺激があれば一時的に目覚めるが、刺激中止とともに深く眠ってしまう。意識清明が失われている。

D.昏睡状態            、

 どんな刺激でも目覚めることのない状態。脳波異常が見られることが多い。

(4)様々な意識変容

A.せん妄

 せん妄とは、軽度・中等度の意識混濁に錯視、幻視、幻聴などの妄想や異常行動が加わり、特徴ある臨床像を呈する意識変容のことである。認知機能が障害されるために、外界は夢幻様に変容して錯覚が生じる一方、表象は知覚的な性質を帯びて、実在するものと区別されない。これらの錯覚や幻覚は現れては消え、あるいは夢のように展開し、患者は夢幻的な世界に没入することになる。無限症ともいう。ラゼーグは、アルコールせん妄は精神病ではなく、夢であるという。

B.夜間せん妄

 せん妄は、通常夜間に著しく、昼間は消失していることが多い。夜間は外界からの刺激が減少するために意識水準が低下しやすく、また、睡眠をとるために脳の活動水準が低下するためと考えられている。

C.アンチメア

 意識変容が目立だない軽度のせん妄状態に相当する用語で、昔使われていたもの。歴史的には、急性精神病の一般的な状態像を示す用語として用いられ、①多彩な症状の転変を特徴とする状態像で、思考における連合の解体という脱落症状と、②幻覚・錯覚、不安・抑うつ、躁的興奮、昏迷の移行など多彩な陽性症状が組み合わさったものである。

D.もうろう状態

 もうろう状態とは、始まりと終わりがはっきりしている意識変容の代表的な状態の一つである。意識野が急速な偏りと萎縮を来たし、いつもの意識の流れが突然断たれ、別の内容を持った意識に変わる。通常、健忘を残して急速に戻る。  意識混濁の程度は軽く、外部の認知は可能であるが、外界を広く適切に把握することができない。興奮を伴い、不安、恐怖、抑制の欠如があり、加えて外界を誤認することから唐突な行動や衝動的な行為を示す。大きく分けると、①てんかん性もうろう状態、②心因性もうろう状態、③病的酩酊や急性アルコール中毒で見られるもうろう状態などがある。