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意志

1.意志とは



 意志とは、ある行動を選択・実行することである。動因、動機、欲求などの行動を引き起こす内的な状態とほぼ同じ意味で用いられ、何かをしよう、何かをしたいという気持ちを表す。「意志」→「動因・動機・欲求」という流れ。

 精神医学では、意志を動因の上に立ってそれを方向づけるものと定義している。意志&動因=意欲である。なお、その意志や意欲の障害として、制止( 意志の表出が緩慢になる)途絶(感情の表出が突然中断すること)混迷(意志表出の欠如か、極めて乏しい状態をいう。全く動かない状態になること)などがある。

 なお、ジェームズは、欲望が実現しそうにないときにその欲望を願望といい、実現しそうなときにその欲望を意志と呼んだ。ヴントは、意志の前提に感情的な色彩を帯びた動機があると考え、単一意志動作(衝動動作) や複合意志動作(有意動作) に分けた。

2.様々な意志

(1)意志薄弱

 意志薄弱とは、環境の影響を異常に受けやすい傾向のことである。シュナイダーの意志欠如とほぼ同義でだが、それよりは軽い程度と受け取られている(意志薄弱<意志欠如)。意志の発動性と持続性がぜい弱なため、自立心に欠け、他人や環境の影響を受けて目的・決意などがころころと変わりやすく、ほぼほぼ信用できない。ブロイラーは、意志薄弱を変温動物に例えている。もちろん、社会的に望ましい影響よりも、安易で快楽志向的な影響の方が受けやすいのはいうまでもない。

(2)意志欠如

 人間の精神活動を知性、感情、意志の3領域に区分した場合、意志欠如は、意志の機能の障害のことである。ここでの意志とは、意識された目標に対して行動や態度を決定することで、意志欠如は意思決定の不能ともいえる。古くから、意志亢進、意志薄弱、意志欠如または無為などに分類されてきた。

A.無為

 周囲への感情的反応や関心が乏しくなり、日常生活の様々な側面に無関心となり、周囲へ積極的に働きかける構えを失った状態をいう。そのため、何かをしようという意志がありながらも、何らかの原因でその実現が妨げられ、何もしない状態とは区別される。統合失調症では発動性の低下に伴って生じ、軽いものは意志低下と呼ばれる。

B.途絶

 途絶とは、幻覚などの病的体験に支配されて、意志の働きが突然妨げられるようになった状態である。突然思考の流れが途絶え、一瞬、思考が空白になるが、ほどなくして思考の流れが戻る。しばしば作為体験や影響体験として、「そうさせられている。」と説明されることが多い。ぷちフリーズ。

C.抑制

 抑制とは、うつ病などをきっかけに行動・思考の流れが止まった状態のことである。19 世紀末頃から、精神病質パーソナリティの自主性の欠陥を示す言葉として用いられるようになった。