臨床心理学にいる

臨床心理学や犯罪心理学についてだらだらと書き綴るサイト。

羨望

1.羨望とは



 羨望とは、うらやましく思う気持ち。嫉妬が三者関係の中で競争者を排除し、自分が愛する対象を獲得したいという欲求から生じるものであるのに対し、羨望は二者関係で生じるもので、対象の持つものを自分のものにしたいという点で区別される。

 対象が良いものである、あるいは、良いものを持っているゆえに、その良い対象を攻撃し、破壊しようとする陰性の感情である。その結果、その対象から取り入れて自分を豊かにする良いものも同時に破壊してしまうことになる。言うまでもなく、その結果は自滅ということになる。

2.羨望の病理

 クラインは、良い対象、良い母親、良い乳房、良い分析家の創造性を破壊する最も原初的な破壊・攻撃欲動を見出し、それに「羨望」と名づけた。具体的には、自分が思い描く社会的達成ができないことで世間を恨み、衝動的に無差別殺人に走る人がいるが、その動機に羨望を見ることができる。背景には野心、貪欲さ、憤怒が漂い、良いものを根本的にだめにするという羨望の在り方が、人と傷つけることに結びついている。良いものを持ち、良い人たちに囲まれているように見える人たちへの破壊的攻撃である。