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覚醒剤型@依存性薬物

1.覚醒剤型薬物の特徴



中枢作用:興奮
精神依存:+++
身体依存:-
耐  性:+++

 代表的なものは、アンフェタミンやメタンフェタミンなどであり、覚醒亢進と食欲減退をもたらすのが特徴である。薬の効果は12時間以上も続き、多量に摂取すると暴力的行為、不安、不眠、さらには幻覚、妄想、情緒不安定といった精神病症状を引き起こす。

 アメリカやイギリスでは主にアンフェタミン系が使用され、日本ではメタンフェタミン系が広く出回っている。中枢神経興奮作用は、メタンフェタミンの方がアンフェタミンよりも2倍近く強いとされる。

2.アンフェタミンの歴史と特徴

 アンフェタミンは、1887年にルーマニアの化学者ラザル・エデレアーヌによってベルリン大学で合成された薬である。日本国内では、覚醒剤取締法によってフェニルメチルアミノプロパンとして規制対象となっている。なお、日本で「覚醒剤」として密売されているのはアンフェタミンではなくメタンフェタミンだが、昔、ゼドリンという商品名で売られたこともあった。

 アンフェタミンを使用すると、瞳孔が拡大し、呼吸数・心拍数・血圧が急激に上昇し、食欲減退・神経過敏・活動の亢進といった中枢神経の興奮作用が生じる。精神的には、高揚した気分になり、陶酔感・多幸感・社交性の増大といった作用が発現する。一見するといいことばかりのように見えるが、副作用が何よりも問題である。長期間使用したり、一時的とはいえ大量に使用したりすると、統合失調症に似た精神状態や不眠、攻撃性の増加といった副作用が現れる。

3.メタンフェタミンの歴史と特徴

 メタンフェタミンは、1983年に東京帝国大学教授の長井長義によってエンドロフィンから合成された薬である。日本国内では一般的に「覚醒剤」と呼ばれている。1941年に大日本製薬からヒロポンとして発売され、第二次世界大戦中において生産性向上のため、政府によって軍需物資として使用された。軍部によって「突撃錠」や「猫目錠」として夜間戦闘機の搭乗員や軍需工場の作業員に配布され、戦争末期には特攻隊員に「特効錠」として支給されたといわれている。戦後になると民間に流出しただけでなく、ヒロポンも薬局で市販されたため、これを常用する労働者が激増して社会に蔓延することとなった。社会問題化したメタンフェタミンを規制するため、1951年に覚醒剤取締法が制定され、1954年にはその罰則を強化し、一時的に社会から姿を消すことになった。しかし、1970年代になると非合法されたメタンフェタミンは、暴力団が独占的に販売するようになりその資金源となっている。

 メタンフェタミンを使用すると、アンフェタミン同様に瞳孔が拡大し、呼吸数や心拍数が急激に上昇するなど中枢神経系の興奮が生じる。精神的には、高揚した気分となり、多幸感と呼ばれる状態に包まれる。メタンフェタミンのこのような作用には、脳内のA10神経とドーパミンが深く関わっていることが明らかにされている。

 アンフェタミンと同様に副作用が問題で、きょろきょろ、そわそわといった常同行動が生じ、過覚醒のために数日に渡って不眠状態が続く。また、ドーパミンが過剰に供給されるという統合失調症に似た作用機序が生じるため、幻覚妄想といった症状が出現し、長時間使用すると覚醒剤後遺症として統合失調症様の症状を呈するようになる。