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暴走族

1.過去の遺物「暴走族」



 1980~90年代、高度成長期のまっただ中の社会は、子どもに勉強ができる「良い子」や受験の勝利者、社会の要求に応えて結果を出す若者を一方的に要求した。それだけにそれに応じられない子どもにとって、社会は極めて冷酷で不寛容、そして否定的かつ抑うつ的なものと見え、そのむしゃくしゃした気持ちの発散を求めて手っ取り早く「暴走」という行動に走った。しかし、2000年代になると、バブルが崩壊したことで若者像が多様化する中、社会は子どもに無関心になり、「暴走」する意味が失われるようになった。反抗する相手が不在の「暴走」は衰退の一途をたどり、意味が失われる中、今では過去の非行・犯罪の一つと見られるようになっている。

 安香(1980)は、暴走族の特徴を一言で表現するなら、落ちこぼれの意識と感情にあると指摘している。メンバーに学生が非常に少なく、グループ自体の活動性は高いものの、メンバーの一人ひとりは無気力で、組織としての統制は極めて弱く流動的、そして警察や一般人への当てつけ的な行動が多いと続ける。

2.暴走族の学術的意味

 犯罪心理学的に、暴走族は単なる子どもの悪ふざけという位置づけで研究はほぼほぼ行われていない。ある一定の年齢に達すると変わり身早く非行・犯罪から離れていく傾向がうかがえ、多くは「暴走」を不適切なモラトリアムの一過程として、あるいは大人への通過儀礼として歩んでいくと見られていることに起因する。