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ジークムント・フロイト

1.ジークムント・フロイト



 私は善悪についてそれほど頭を抱えたことはありませんが、人々の中に「善」を見出したこともありません。私の経験では、善や倫理観をうたっていたとしても、多くの人間はクズのようなものです。

 ジークムント・フロイト、オスカー・プフィスターへの書簡より

オクノフィリアとフィロバティズム

1.オクノフィリアとフィロバティズム



 バリントが、前エディプス期の対象関係の障害に対するポジションの2つをオクノフィリアとフィロバティズムという言葉で定義つけた。

(1)オクノフィリア

 オクノフィリアとは、成長の過程で見出される重要な対象にしがみつき、これを独占し、一体化しようとする傾向のことである。その相手なしには生きていられないと感じ、強烈な分離不安が生じる。それゆえ、死にものぐるいでしがみつくとともに、対象を理想化することになる。例えば、母親に固着すると、いつまでも甘えと反抗と不満に執着し続けることになる。

 しがみつきの背景には、何らかの不安や不満が存在するが、そのしがみつきが新たな葛藤を生じさせるという悪循環に陥っている。

(2)フィロバディズム

 フィロパディズムとは、対象関係の一切を信用できない欺瞞的なもの、冷酷なものと考え、関わりそのものを回避し、自然などに没入することである。森と山に自己形成を見出した空海、近親相姦願望を禁忌とし、石ころや草木の中に関わりを見出しそれを「恋した」宮沢賢治などを例に上げられる。福島(1980)は、「他者」を無視した自然への没入こそ原初的エロスの再現に最も近いと述べている。

 フィロバディズムは、分裂病圏のように奇妙でひねくれた不自然なものではなく、よく見れば自然で、微笑ましい種類のものであるという。俗世から超越した人間感は、現実を冷めた目であるがまま見ることを可能にするのかもしれない。

演技性パーソナリティ障害

1.演技性パーソナリティ障害とは



 演技性パーソナリティ障害は、過度に情緒的で、周囲の注目や関心を要求する行動様式によって特徴づけられる。もともとDSM-2において「ヒステリー神経症」と「ヒステリー性パーソナリティ」の2つに分けられていたが、従来のヒステリー性格の特徴である身体的機能障害は「転換性障害」に、精神的機能障害は「解離性障害」に区別され、DSM-3で演技性パーソナリティ障害という用語にまとめられることになった。

 演技性パーソナリティ障害の特徴は、誇張した情緒表現や誘惑的な態度が顕著で、強い性愛性、注目の的になることを求める露出症的な欲求が強く、そこには対象を引きつけ、思い通りに操作したいという万能感が潜んでいる。演技性パーソナリティ障害は、一般にヒステリーといわれるパーソナリティが重症化したものであり、そのヒステリー・パーソナリティ自体は、転換症状、解離、夢遊、豊かな空想等であり、情緒は豊かなものといえよう。

 演技性パーソナリティ障害は、口唇期においてさほど重篤ではないものの母性剥奪を体験していることや、性同一性の確率に困難さがあることなどが指摘されている。毋性剥奪により依存欲求の充足を父親に求め、そこで関心を得るためには、気を引くようなそぷりや芝居じみた自己顕示的な感情表出が必要であることを学ぶ。また、かわいい子どもで居続けるため、性愛は抑圧され続けることになる。