1.不安とは
不安は、漠然とした未分化な怖れの感情である。しばしば恐怖が、はっきりした外的な対象に対する感情であるのに対し、不安は内的な矛盾から発する、対象のない情緒的な混乱で、重いものになると情緒的な体験は破綻する。また、破局的状況に置かれた主観的体験を不安と定義するときもある。なお、不安は多少とも身体的表出を伴い、動悸、どきどき、発汗などから瞳孔の散大にいたる多彩な自律神経症状を呈する。
2.不安の発達的なヒエラルキー
A.破滅・解体不安
自己がばらばらになり、統合を失う恐怖のこと。
B.迫害不安
外界からの迫害対象が侵入し、内側から絶滅させるという不安のこと。
C.対象喪失のおそれ(対象喪失)
対象の愛情のみならず対象そのものを失う恐怖であり、分離不安と呼ばれる。
D.愛情喪失のおそれ
重要な他者から愛情や承認を失う恐怖である。
E.去勢不安
報復的な両親像の手によって身体を潜在的に傷つけられたり、失ったりすることに集中する。
F.超自我不安
最も成熟した水準。不安は超自我に由来し、内的な基準に従って生きていないという罪悪感や良心の呵責として理解される。