1.摂食障害とは
摂食障害とは、特定の精神障害に起因せず、食行動の異常をきたす障害の総称である。不食による痩せを特徴とする①神経性無食欲症と、むちゃ食いを特徴とする②神経性過食症に大別される。「anorexia=食欲がない」というのは、言葉の持つ本来の症状を反映しているとはいえず、食欲がありながらも体重や体型への強いこだわりや無意識的葛藤から極端な接触に及んでいるといえよう。
①神経性無食欲症は、痩せていることが美徳であると考えられていない国ではほとんど知られていない。精神的要因と生物学的要因は、摂食障害の病因として過小評価されるべきではないが、これらの要因は明らかに文化・文明につながっている。
(1)神経性無食欲症
神経性無食欲症には、太ってしまうことに対する圧倒的な恐れと痩せることに対する熱狂的な追求が併存している。多くの場合、自分は無力で、無能であるという極めて強い信念を抱いている。これまで両親を満足させようとしてきた「良い子」に疲れ切ったときに病気は生じ、青年期になって突然頑固で、拒否的になる。自分の身体はしばしば自分と分離したものと体験され、あたかも両親の「もの」であるかのように感じる。ブルッフ(1987)は、自分の身体を支配・抑制することで、自己の感覚や対人関係を「救済」し、不安や葛藤を接触やサイズの操作に変形させてしまうと指摘し、マスターソン(1977)は、子どもは母親を喜ばせるために偽りの自己を発展させ、完璧な子どもになろうとするが、無理強いされた役割は拒食という反乱となって現れることになるという。「私は、良いものを何一つ所有できません。だから私は、全ての欲求を放棄するだけです。」と。
(2)神経性大食症
比較的正常体重であることやむちゃ食い・下剤乱用があることによって、神経性無食欲症とは区別される。
2.無食欲症と大食症の違い
ミンツ(1988)は、無食欲症と大食症は本質的にコインの表と裏であるという。無食欲症は、顕著な自我の力と際立った超自我の支配に特徴づけられる一方、大食性は、弱まった自我と緩んだ超自我に基づいた無力性に病んでいる。共通のテーマは、移行対象の欠如である。