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シュナイダーの精神病質人格類型

シュナイダーの精神病質人格類型



1.狂信者

 熱狂者と訳すこともある。その特徴は、思想と行動全般の中で支配観念が際立った優位性を示し、社会に認めさせるために熱狂的・徹底的に動き回ることにある。その際、個人的欲望や自分の生活、家族などには一切目を向けない。シュナイダーは狂信者を2亜型(①闘争的な狂信者と②活気のない好訴者)に分けた。

(1)闘争的な狂信者

 強い自我感情と権利意識を持ち、自分の主義主張の中に「公共的重大性」を認めて闘争し続ける。もちろん、全財産・全生涯をつぎ込むこともいとわない。

(2)活気のない好訴者

 風変わりな主義・思想を持つが、主張の仕方は穏やかで、奇妙な服装・態度・言動などによる。多くの信者や追従者を集めることもある。

2.意志欠如者

 意志欠如者とは、シュナイダーの精神病質人格10 類型の一つであり、クレペリンの軽ちょう者とほぼ同義である。あらゆる外的な影響に対して無抵抗で、異常なほどに左右され、そそのかされやすい。いわば「変温性の環境人間」で、良い影響も受けやすいが、その枠組みがなくなるとそれもなくなり、再びその場の影響を受けて流される。一応失敗すれば、後悔や決意を表明するが、その効果が長続きすることはない。

3.自信欠如者

 自己不確実者とも訳される。自信欠如者は、内的な不安定性と自己不全感を共通する特徴とされ、次の①敏感者と②強迫者に分けられる。

(1)敏感者

 敏感者は、目の前の出来事をきちんと把握することはできないにもかかわらず、何事も自分に責任があると感じやすい。自信がないからこそ、全部自分のせいにしてうじうじと悩む。

(2)強迫者

 強迫者は、持続的な罪悪感や不全感にとらわれ、失敗する不安からきちんとならなければならない思いに縛られている。自信がないからこそ、きちんとしないと落ち着かない。

4.顕示者

 衝動的に嘘をついたり、芝居をしたりして衆目を集めようとするが、内容は空虚で、真実味に乏しい。奇妙な言動や誇張、嘘、自慢、空想虚言、詐病、ときには自傷や演技的な自殺などが見られる。シュナイダーは顕示者を更に、①奇妙な顕示者、②自慢性顕示者、③虚言性顕示者の3亜型に分けた。

5.情性欠如者

 同情心、羞恥心、反省、悔悟、名誉、自他の運命に対する想像力など人間味あふれた感情を情性というが、この情性を欠如したものと定義される。情性欠如者は、薄情者、冷情者、冷血などといわれ、冷淡、残忍、冷酷で、殺人、放火、強盗、強姦など凶悪な犯罪者になる。犯罪学的には、早発・持続・多種方向犯罪者に多く、クレペリンは「社会の敵」と呼んだ。

6.爆発者

 些細な刺激によって激高し、少しも考えることなく攻撃するような人である。クレペリンの「興奮者」に対応する概念で、シュナイダーは①刺激型と②興奮型の2亜型に区別される。

(1)刺激型

 刺激型は、感受性が敏感で気分は不安定、緊張が強く容易に爆破する。

(2)興奮型

 興奮型は、感受性が鈍感で、体型は闘士型が多いが、不快感などがうっ積して突然爆発が起こる。暴力犯罪との関連が深く、青年期終盤から次第に目立だなくなる。

7.発揚者

 陽気な基底気分を特徴として、たいていの場合には多血性の気質や高度な活動性などを伴う。軽躁者ともいう。朗らか楽天的で、どんな体験にもくじけず、活動的でいつも現実に向かって働きかけ、多くは人に親切で調子がいい。その一方、深刻さ、徹底性、批判力、分別を欠き、軽率で信頼できない。自信家で、罪を犯しても反省とは無縁である。

 亜型としては、①興奮性の発揚者、②好争性の発揚者、③軽ちょう者、④虚談者などが上げられる。

8.無力者

 自分の心身を全く信頼していないため、必要以上に気にかけ、些細なことに違和感を覚えて疲弊しやすい。活気に乏しく、喜びや情熱から無縁な生活を送っている。無力者の中には、①心身症型のタイプと②神経衰弱型のタイプの2つある。ほぼ神経質者と同じ概念である。

9.抑うつ者

 あらゆる生活経験において抑うつ的な気分が持続的・恒常的に支配しているような人で、抑うつ精神病質ともいう。えん世的・懐疑的な人生観を持ち、全てが耐えがたく思われ、素朴な喜びを感じることができない。過去は無価値で未来は驚異的に感じ、希望も自信もない。シュナイダーは、①気重な抑うつ者、②不機嫌な抑うつ者、③偏執的な抑うつ者に分けた。