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恐怖症

1.恐怖症とは



 恐怖症とは、たいして危険でも脅威でもないはずの対象や状況に対して、不釣り合いなほどに激しい恐怖を覚え、理屈に合わないとわかっていても、恐怖に駆られてその対象や状況を回避しようとする病的な恐怖のことである。非合理的で、抵抗できないという点では、恐怖というよりも強烈な不安といえる。

 恐怖症は、そのテーマにしたがって名付けられ、広場恐怖、対人恐怖、動物恐怖、疾病恐怖、不潔恐怖などが上げられる。なお、行動主義の立場から神経症は学習された不適応反応とされるが、その典型的な例として恐怖症が選ばれている。なお、DSM-5 における不安障害の分類に含まれる恐怖症は、限局性恐怖症、社会不安障害あるいは社会恐怖などである。

 恐怖症の精神力動的な理解は、報復的な罰をもたらされたり、禁止された性的あるいは攻撃的な願望が表れたりすると、信号不安が活性化されて3つの防衛機制(置き換え、投影、回避)が生じる。これによって禁止された願望は再び抑圧され、不安はなくなったかのように見えるが、実際にはその不安が恐怖神経症を作り出すことによってコントロールされることになる、とされる。

(1)対人恐怖

 他人と一緒にいる場面で不当に強い不安と精神的な緊張が生じ、軽蔑されるのではないか、嫌がられるのではないかと案じて、できるだけ身を引こうとする神経症の一型である。身近な大や全く知らない人の中にいるときは、それ程、不安は生じない。思春期前期(中学校後半から高校後半)に発症し、慢性的であるが、中年期に入っても持続することは稀である。ときとして統合失調症の前駆症状として見られることも多い。

A.視線恐怖

 対人恐怖症の一亜型。青年期に多く、人の前に出ると視線が気になり、落ち着きを失い、それゆえに馬鹿にされると考えて人目を避けようとする。

B.醜形恐怖

 対人恐怖の一つで、自分の身体には独特の醜悪さ、世界の二つとない異形性があると信じこみ、そのために他人に不快感を与えたり、軽蔑されたりすろついて対人関係から身を退こうとする神経症である。身体部位が問題となるため心気症と近縁の関係にあり、またセレクトパチー(体感症)をそのそこに持つことも多い。妄想的な確信に至ると醜形妄想と呼ぶ。

(2)広場恐怖

 自宅から遠く離れた大通りや慣れない繁華街などに行くとたちまち不安に襲われるため、そのような場所に近づくのを恐れ避ける。不安発作も生じるのが特徴で、恐怖場面にさらされると鋭い形の不安が生じることになる。       卜

A.閉所恐怖

 閉じ込められる状況に対する病的恐怖のこと。広場恐怖の一型とされ、外出恐怖を伴う例も多い。パニック障害にしばしば合併する。

(3)高所恐怖

 高いところにいることを病的におそれる恐怖症のこと。高い場所が、現実には危険な場所ではないことをわかっていながらも、激しい恐怖を覚え、めまいを感じ、足がすくむ。物理的空間に芻ける高所ではなく、心理的空間の高所であり、「大地との連続感が保持される」高所において生じるのが特徴的である。

(4)疾病恐怖

 ある病気、あるいはその病気の徴候を異常におそれることをいう。心気症には疾病恐怖が伴いやすい。

(5)動物恐怖

 特定の動物に対する恐怖症。「今昔物語」にも蛇恐怖や猫恐怖の話が出てくる。