臨床心理学にいる

臨床心理学や犯罪心理学についてのあれこれ

犬神憑きとキツネ憑き


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1.犬神憑き

西日本の特に四国地方に見られた現象。犬神筋または犬神持と呼ばれる特定の家系の人が、犬神という小動物を駆使して害を与えると信じられていた。取り憑かれると急激に人格が転換し、二重人格を呈することになる。第二人格は犬神筋の人とそっくりな振る舞いをするのが特徴で、数時間から3〜4日程度で健忘を残して完全に回復する。

山村の閉鎖的な人間関係を背景に、犬神筋の家系と村人との間の争いや慢性的な葛藤状態などが(心因)発症契機とされる。宮本忠雄は、日本語の構造そのものや日本人の他者と融合して自我感を薄めていく傾向が、憑依体験と親和性を持つからと指摘している。

2.キツネ憑き

キツネの霊が人間の身体に憑依するという民族信仰を基盤にした動物憑依の代表的な現象。キツネ憑きの典型は、人格変容を示し、あたかもキツネのような言動を示すことにある。疎外意識と関連した被害妄想、憑依妄想、体感幻覚、幻聴などが見られる。人に憑くキツネの多くは、家筋(キツネ持ち)や特定の行者(イヅナ使いなど)によって飼育された特殊なキツネとされ、婚姻によって伝播すると信じられていた。

キツネを憑けられる人と憑ける人、キツネ憑きを受け入れる村々の間には不幸と幸福をめぐる妬みや嫉み、恨みなどの葛藤や差別、村八分につながる病理が背景に存在するとされる。