臨床心理学にいる

臨床心理学や犯罪心理学についてのあれこれ

悪魔憑き


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1.悪魔憑きとは

悪魔に憑依され、支配されているという幻覚・妄想のこと。悪魔体験に関連する病態を総称して悪魔症ともいう。ゼグラ(1895)によると、次の3つに分類される。

① 外的悪魔憑き

悪魔は外から嫌がらせをする(≒迫害不安)。

② 内的悪魔憑き

悪魔は中にいて身体を支配する(≒憑依妄想)。

③ 真正悪魔憑き

自分自身が悪魔であると感じている(≒化身妄想)。

基本疾患は多様だが、基本的には被害妄想の一種であるため統合失調症との親和性が強い。中世ヨーロッパにおける精神障害の主流を占め、魔女狩りの対象となった。日本の場合は、犬神憑き、キツネ憑きなどに姿を変える。

(1)犬神憑き


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西日本の特に四国地方で見られた現象。犬神筋または犬神統(いぬがみとう)と呼ばれる家系の人が、犬神という小動物を駆使して害を与えると信じられていた。取り憑かれた人は、急激な人格転換が生じ、二次人格を呈することになる。二次人格は犬神筋の人とそっくりな振る舞いをするのが特徴で、通常、数時間ないし3〜4日間で健忘を残して回復する。

山村の閉鎖的な人間関係を背景に、犬神筋の人々との争いや慢性的な葛藤などの心因が発病契機とされる。宮本忠雄は、日本語の構造や日本人に他者に融合して自我感を薄めていく傾向が、憑依体験に親和していると述べている。