臨床心理学にいる

臨床心理学や犯罪心理学についてのあれこれ

MAS(顕在性不安尺度、Manifest Anxiety Scale)

MAS




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1.不安に関する2つの質問紙法


アイゼンクら(1985)は、特性とは、様々な状況を通じて行動を規則的・永続的に決定する要因であり、状態とは、ある特定のときに生じる要因であるという。 テイラー(1953)のMAS(顕在性不安尺度)は、永続的な不安(特性不安)を測定するために考案された質問紙である。しかし、キャッテルらは、不安は何らかの嫌な出来事をきっかけに生じた一時的な状態でもあるため、特性不安だけでなく状態不安も加えるべきとしててSTAI(状態ー特性不安尺度、State-Trait Anxiety Inventory)という質問紙を開発した。STAIは、MASの上位互換といえるかもしれない。


2.MAS(顕在性不安尺度)


MASは、日常生活の中でその人が意識している特性不安を測定する検査である。テーラーは、MMPIの中から50項目を選び出してMASを作成した。MMPIの追加尺度であるが、独立した検査として用いることが多い。オリジナルは275項目であるが、日本版では妥当性尺度のL尺度15項目を加えた65項目で構成されている。

良くも悪くも、意識している不安、意識できている不安しか測定できないのが特徴であるため(単独で用いにくく)、ロールシャッハテストなどの投影法とテストバッテリーすることが求められる。

なお、児童用にA.カスタネーダとB.S.マッキャンドレスによって考案されたCMAS(児童用不安測定尺度)がある。


質問紙法

質問紙法



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1.質問紙法の特徴


質問紙法は、被験者(テストを受ける人)が、ある特定のテーマに関する質問項目に、「はい」、「いいえ」、「どちらでもない」などで回答する心理検査のことである。アンケートのようなものだが、主にパーソナリティをとらえようとするものと、不安などの一部のパーソナリティをとらえようとするものに分けられる。

自分の行動や意見を記述することができる場合、質問紙法や面接法は有効な手段である。 質問紙法や面接法は、被験者の言葉を信頼するという点で同じであるが、質問紙法では被験者自身が質問を読み、回答する(自記式)のに対し、面接法では被験者に直接つ質問を行い、回答を面接者が記入する(他記式)ことになる。そのため、質問紙で得られる情報は、被験者の記述した回答のみに限られる。


2.質問紙法の長所と短所


(1)長所

  • 施行や結果の整理が簡単である。コスパが良い。
  • 実施者の負担が少ない。
  • 時間がそれほどかからない。
  • 集団でもできる。
  • 統計的・客観的なデータが得られる。
  • 解釈が簡単。誰でもできる。

(2)短所

  • 被験者が適当に回答すると、適当な結果しか得られない。虚偽や社会的望ましさの影響を受けやすい。
  • 浅い。無意識はわからない。
  • 検査する状況をコントロールしにくい。
  • 質問紙以外の情報は基本的にスルー。行動過程は記録できない。
  • 問われている内容に沿った回答しかできない
  • 被験者の言語能力に依存する(→幼児や高齢者に不向き)


3.質問紙法の種類


(1)パーソナリティをとらえようとする質問紙法

  • MMPI
  • 矢田部ギルフォード(YG)性格検査
  • MPI
  • NER-PI-R
  • 向性検査
  • エゴグラム
  • EPPS など

(2)一部分を限定的にとらえようとする質問紙法

  • MAS:不安
  • STAI:不安
  • CMI:身体・精神症状
  • SDS:うつ症状
  • BDI:抑うつの程度 など


2つの条件づけ

2つの条件づけ



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1.古典的条件づけと道具的条件づけ


条件づけには2つある。1つ目は、パブロフ型条件づけ、古典的条件づけ、レスポンデント条件づけといい、2つ目は、試行錯誤学習、道具的条件づけ、オペラント条件づけと呼ばれるものである。それぞれ条件づけられた行動は、1つ目は、条件反応、レスポンデント行動といい、2つ目は、強化された行動、オペラント行動と呼ばれる。この2つの条件づけは、帝政ロシアのパヴロフと、アメリカのソーンダイクによって発見されることとなった。

(1)I.P.パブロフ


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I.P.パブロフは、胃酸の分泌量と分泌時間が、胃の中に入った食料の種類と量の関数であることを発見する過程で、皿を見せるだけでも、犬が胃酸を分泌することを見出した。つまり、餌という刺激(無条件刺激:US)によって引き起こされる反応、例えば唾液(無条件反応:UR)は、餌(US)とほぼ同時に呈示した刺激、例えば皿やベルなど(条件刺激:CS)によっても引き起こされることがわかった。

パブロフは、餌(US)と皿やベルなど(CS)が繰り返し呈示されることによって、皿やベルなど(CS)によっても、餌(US)に類似した反応(CR)が喚起されるようになる「条件づけ」という現象を発見したといえよう

(2)E.L.ソーンダイク


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その一方、E.L.ソーンダイクは、ネコを小さな仕掛け箱(S)の中に入れ、ネコがそこから出ようと試行錯誤を繰り返し、やがて仕掛けを外すようになるまでの過程を観察した。その結果、それら一連の動作が機械的で、自動的に行われることを見つけ、ネコの反応(脱出)に続く餌という報酬(強化子)の重要性を強調した。ソーンダイクは、反応(R)に続く報酬(例えば、ネコの好きな餌)が、いわば接着剤のような働きをして、S(仕掛け箱)とR(脱出)とを連合させると説明し、効果の法則と呼んだ。

(3)補足

この時代、人間の学習は観念の連合によって成立すると考えられ、動物とは異なる知的な存在であると信じられていた。しかし、この2人が実験で示したことは、人間の学習は、動物と同じように機械的・自動的に行われているという事実であった。このような条件づけにいち早く注目し、研究を始めたのがJ.B.ワトソンである。

2.現在の2つの条件づけ


現在のところ、条件づけには2つの異なる手続きがあり、異なった種類の反応が、2つの手続きによって学習されると考えられている。E.R.ヒルガードとD.G.マーキスは、パブロフの発見した条件づけは古典的条件づけ、ソーンダイクの発見した条件づけは道具的条件づけと名付け、B.F.スキナーは、それぞれレスポンデント条件づけオペラント条件づけと名付けた。

(1)レスポンデント条件つけ

レスポンデント条件づけとは、生得的な反応を引き出せる刺激(US)が、皿やベルなどのCSと対呈示されることにより、CSがUSと同様の反応誘発性を持つようになるという現象である。皿やベルなど(CS)が、唾液など(UR)を誘発することになる。

(2)オペラント条件づけ

オペラント条件づけとは、一定の環境下で、その反応(オペラント)が特定の結果(強化子)と出くわす機会が多くなることにより、その後、そのオペラントの出現頻度が増えたり、減ったりする現象である。変容し得る行動をオペラント行動という。オペラント条件づけにおいて重視されるのは、どのような刺激のもとで、どのような反応をすれば、どのような結果が随伴するのか、すなわち<弁別刺激ーオペラント反応ー強化子>の三項随伴性である。三項随伴性に関する経験則を明らかにし、行動に関する知識の体系を確立することがスキナーの実験行動分析の目的でもあった。

(3)共通する特徴と共通しない特徴

オペラント条件づけにおいて、目標となる反応の生起頻度を上げる刺激を、反応にくっつけて呈示することを強化子と呼ぶ。このとき毎回、強化子を呈示することを連続強化といい、やったり、やらなかったりするのを部分強化という。無強化が混ざった状態といえるが、それにも関わらず連続強化よりも消去抵抗が高い。時々の方が、価値を感じ、魅せられてしまうのかもしれない。

ちなみに、レスポンデント条件づけとオペラント条件づけは、両方とも時間軸上ではS(CS:皿やベルなど)→R(UR:唾液/CR、あるいはオペラント)→S'(US:餌あるいは強化子)という流れを共有するが、反応が条件付けられることに対して、レスポンデント条件づけではS→S'の関係性(皿やベル→餌)が重要になり、オペラント条件づけではR→S'(オペラント→強化子)の関係性が重要になる。

ちなみに、この2つの条件づけのプロセスが、独立したものかどうかについての見解は一致していない。